Dysonの新製品発表イベントで出会った義足研究者の遠藤さんに頼み込み、SonyCSLという研究所でアルバイトとして働かせて貰えることになったのですが、ここは本当に別世界でした。
遠藤さんはMIT(マサチューセッツ工科大学)で博士号を取得した、テレビとか漫画の設定に出てくるような人です。世界最先端の研究者というざっくりしたイメージを思い浮かべて貰えればおおよそ合ってると思います笑
他にも遠藤さんのところには学生のアルバイトが何人かいたのですが、みんな東大とか東工大とかでロボットの研究をしてる人たち。
がっつり研究の話になると、ほんとにみんなが何言ってるのかわからない。エントロピーが増大してるかどうかの議論の時、僕は一体どういう顔してたんだろう笑
そんな中、僕の役割はチームが開発するロボット義足をいかにみせるかを考えることでした。販売するための製品ではないので家電や車のような印象ではなく、あくまでも基礎研究のプロトタイプであるという事をそのまま形に表すように心がけました。そして他の研究者に加えてメディア関係など工学分野じゃない人たちにも機能と魅力がしっかり伝わるように、動作に必要な機構をそのまま見せながら、重要なパーツは更に強調されるようにデザインしました。
足首の力を再現するには本来大きく重いモーターが必要だが、バネを使った補助機構を組合わせて小型化。
モーターにより足首が「回転すること」と小型化の為の重要パーツ「バネとギヤ」が強調されるデザイン。
停止時には隠れているが、動作すると赤い色が見えてくる。
機能を形に表す、という僕のデザインの方向性を定めた最初の仕事でした。
そのためにエンジニアリングを理解する重要性を実感しました。研究者レベルとはいかなくても、技術についてコミュニケーションが取れれば、その機能にもっと適した形をつくり出せると感じました。
SonyCSLで、もうひとつ大きな衝撃だったのは、みんなある程度にでも普通に英語がしゃべれること。外国からきた研究員の人たちもいたので、その人たちが加わると雑談がパッと英語になったり。他にも遠藤さんと外部に出かけたりすると、みんなが英語でしゃべってる場面に遭遇したり。
Dysonに入るならば英語はしゃべれないといけないだろうと思ってはいたものの、英語は本当に苦手というか好きになれず。大学入学後、英語のクラス分けのために受けたTOEICで280点という凄まじい点数だったのはよく覚えています。ランダムにマーク付けてもそれ位いくんじゃないか、というか後半は考えずにランダムに付けてた気がする。。。
そんなレベルでしたが、この環境の後押しもあって英語を勉強するための留学をより現実的に考えるようになります。行けばなんとかなるだろう精神で、通っていた桑沢デザイン研究所を休学して、親戚のいるボストンに1年間行かせてもらうことになります。
どうだったかって? そりゃ苦労しますよ、TOEIC280点ですから笑
ボストンには有名な大学がたくさんあるので、そこに入るために世界中から英語を勉強しにくる人たちがいます。その中で僕はボストン大学のCELOPという英語コースに通いました。
もともと全然勉強してこなかったので大変でしたが、この1年で英語が「嫌い」から「嫌いではない」に昇格しました。CELOPかなりよかったです。
そして日本に帰ってきて桑沢デザイン研究所での最終学年をスタートします。